或るヒスイ拾い人のブログ

ヒスイ拾い雑感。採集した糸魚川ヒスイの紹介。

結晶の大きなラベンダー入りヒスイ


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〈裏面〉f:id:wangnyang:20220720212306j:image

採集日  2022年2月中旬

採集場所 勝山海岸

質量   376g

 

 この日は、2月の寒い日となると思いきや、日差しも暖かく、波も穏やかな日でした。そのため、海岸はたくさんのヒスイハンターで賑わっていました。

 午後の時間帯となりましたが、未だヒスイがとれず、普段はあまり行くことのない勝山海岸に足を伸ばしてみました。

 この海岸は、糸魚川の市街地から親不知の急峻な崖地帯への入口に当たる海岸でして、風光明媚な景観を有していますが、それ故に、少しアクセスが悪く、普段は敬遠しがちな場所です。

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 波も穏やかですので、波打ち際の深めの場所をゆっくりと探し歩きました。そうしていますと、波打ち際の奥に、白く四角い石がありましたので、ヒスイ棒で掬い上げてみましたところ、大きく細長い結晶がギラギラと入るこの石を拾いました。

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 結晶のサイズは大きいところで5ミリくらいあります。触り心地もガサガサしており、ヒスイではないとの思いもよぎりましたが、濡れているときの表面の質感からしても、ヒスイであろうと判断しました。

 後日、フォッサマグナミュージアム学芸員さんにも見ていただいたところ、ヒスイであるとの鑑定を受け、安堵したことを覚えています。

 このヒスイは、人の歯のような愛嬌のある形をしており、薄らとラベンダーも入っているところが魅力かと思います。

 

横川系?の青ヒスイ

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〈裏面〉f:id:wangnyang:20220712195458j:image

採集日  2022年1月上旬

採集場所 須沢海岸

質量   323g

 

年明け早々、ヒスイ拾い始めに行きました。日本海の冬の波としては、そこまで荒れてはいませんでしたが、それでも波はそこそこ強く、海岸は砂が多めの状況でした。

石の露出が多めの箇所をじっくりと観察していましたところ、石と石の隙間に白い石がちらりと見えたので、ほじくり返してみますと、比較的大きめの石がありました。ぱっと見はヒスイかどうか分かりにくかったのですが、よく観察すると、青みがかった筋や、ヒスイ特有の結晶から、ヒスイであることが分かりました。

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 その後、何個かヒスイを拾い、近くのラベンダービーチにある奴奈川姫に持っていただき、記念撮影をしました。

 このヒスイは、質があまり良くないですが、一部、透過の良く青色が綺麗なところもあります。青色の入り方からして、いわゆる横川系のヒスイかと思っていますが、詳しいところは分かりません。

 

 

角閃石混じりの深緑ヒスイ

〈表面〉f:id:wangnyang:20220711205510j:image

〈裏面〉f:id:wangnyang:20220711205517j:image

採集日  2021年12月下旬

採集場所 須沢海岸

質量   105g

 中々、タイミングが合わず、ヒスイ拾いに行けない日々が続いていましたが、2021年も年末となり、「拾い納め」として糸魚川に行きました。

 朝の早い時間帯に海岸に到着しましたが、寒さに加え、風とみぞれが吹き荒れる状況に、1時間も経たずにギブアップし、車の中で天候が収まるのを待っていました。

 少し収まっては海岸に行き、みぞれが強くなってはまた車に戻ることを二、三度ほど繰り返す内に、午後を過ぎた頃には天候も収まっていましたが、もはや海岸を歩く気力体力もなく、もういいかなと諦めかけました。

 服の湿りが少し乾いてきたので、最後にもう一度だけ、と須沢海岸に赴くと、海岸沿いにはヒスイ拾いをする人たちがちらほらと見られました。

 とにかく疲れていたので、さっとだけ見ようと波打ち際まで近付いてみたところ、ヒスイ拾いをしている人がつい先ほど通り過ぎたであろう所に、このヒスイがポツンと落ちていました。

 砂が多く、石があまり出ていない中で、このヒスイの緑色は一際目立っていましたので、見逃すはずがありません。たまたま、私が見たタイミングで、砂の中から顔を出したのでしょう。

 このヒスイの特徴は、やはり、角閃石とヒスイ輝石が入り混じったところです。深い緑色は、角閃石の色に由来するものと思われます。

 興味深い一石です。

白と黒の小さなヒスイ

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採集日  2021年10月下旬

採集場所 親不知海岸

質量   14g


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採集日  2021年10月下旬

採集場所 親不知海岸

質量   28g

 

 10月の終わりの秋も深まる季節、波も強過ぎず弱過ぎずありましたが、海岸は、夜明け頃から、ヒスイハンターで賑わっていました。

 波打ち際を丹念に探していると、波間に小さな白い石を見つけました。ヒスイ棒で急いで拾い上げ、じっくりと観察すると、石英とは異なるツヤが見られたため、直ぐにヒスイだと分かりました。その後、波打ち際で、打ち上がりの黒ヒスイを見つけました。

 この白ヒスイは、手持ちの白ヒスイの中でも、白味が強く、純白に近い色味ですが、透過光は薄く緑色です。

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一見すると分かりませんが、中に微量な元素が含まれているということでしょう。

マルチカラーなヒスイ

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〈裏面〉f:id:wangnyang:20220711205330j:image

採集日  2021年10月中旬

採集場所 宮崎・境海岸

質量   76g

 

 この日は、中々、ヒスイが拾えず、富山から新潟までの海岸を転々と彷徨い歩くような状況でした。諦めきれず、最後に宮崎海岸に戻ろうと引き返し、いつも通り、ヒスイテラスから海岸に降り、東側の方に、俯きながらてくてく歩いていましたところ、波打ち際から少し陸側のところに、この石がポツンと落ちていました。

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 あまりヒスイっぽくない色味の石でしたが、周りの石とは異質な風合いを感じ、拾って観察してみると、手触りや質感から、ヒスイであると確信しました。

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このヒスイの特徴は、全体が青みがかった濃い灰色で、一部に深い青色が入り、深い緑色が散りばめられたように入るところです。明るいところでは、ちゃんとヒスイの結晶も確認できます。石のほぼ中央に黒い脈が走っているところは、角閃石かもしれません。

 

飽きのこない、味のある一石です。

 

青翠ヒスイ

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〈裏面〉f:id:wangnyang:20220711205243j:image

採集日  2021年10月中旬

採集場所 宮崎・境海岸

質量   28g

 

 この日は、天気が良さげなことを前日に確認し、かねてからやってみようと思っていた夜間採集にチャレンジしました。朝の4時台にヒスイテラスに到着し、ヘッドライトを付けて、いざ、海岸に赴くと、既に釣り人が2、3名いました。釣り人にライトをあてないよう気を遣いながら、波打ち際から少し離れた安全なところをじっくりと探し歩くと、明らかに周囲の石とは異なる色味のこの石が落ちていました。

 その後、午後4時頃まで、他の海岸を転々と移動しながら、合計7つの石を拾いました。

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 この内、4つをヒスイと判断し、残りの石は、後日、元の海に戻しました。

 

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 パッと見はキレイなネフライトですが、明らかに質感が異なります。このヒスイの特徴は、透明な質感と深い色味だと思います。全体的に、青にも緑にも見える色合いで、所々に滲むような黒色も見られます。ヒビの部分まで透過もしますが、ヒビが少なければ、さぞかし魅力的に透過してくれたであろうと悔やまれます。

 好みの分かれる色合いのヒスイだと思いますが、個人的にお気に入りの一石です。

 

ヒスイ拾い考 その三

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4 「ヒスイ」について

 手元の鉱物鑑定図鑑(発行:白河書院)によれば、「ヒスイ輝石」とは、以下の性質を有する鉱物です。

⑴化学組成 NaAlSi2O6

⑵白色(緑、淡緑、淡青、青、淡紫、赤褐、黒)

⑶ガラス光沢

⑷透明〜半透明

⑸硬度6〜7

⑹比重3.33

⑺柱状結晶。緻密な塊状、柱状から繊維状。

⑻蛇紋岩岩体中の曹長岩、低温高圧相の変成岩から産出。

 

 ヒスイは「鉱物」ではなく、「岩石」であるとよく言われます。その意味するところは、岩石とは鉱物の集合体であり、一般に「ヒスイ」と言われる石は、①「ヒスイ輝石」という鉱物の集合体である、或いは、②通常、ヒスイ輝石以外の鉱物と混じり合って構成されているということだと思われます。

 ヒスイ輝石の自形結晶は柱状であり、よく「味の素」に例えられます。ヒスイをルーペで観察すると、細長いキラキラを見ることが出来ます。

 

(細かい結晶)

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(良くみられる結晶)
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(大きく成長した結晶)
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 ヒスイは、多数のヒスイ輝石が緻密に絡まりあって形作られています。そのため、ダイヤモンドよりも割れにくいとされています。

 また、ヒスイは変成岩に分類されています。変成岩とは、ウィキペディアによれば、「既存の岩石が変成作用を受けてできた岩石」とのことです。つまり、元々は別の岩石だったものが、圧力や熱などによって、化学的に変化してヒスイになったということです。そうすると、わずかな条件の違いによって、ヒスイに変化する部分もあれば、そうでない部分もあるのではないかと思われます。

 ちなみに、ネットで色々と調べてみますと、「ヒスイ」と呼べるかどうかは、ヒスイ輝石の含有率で判断されるようですが、どうも一義的な見解はなさそうです。概ね、岩石に占めるヒスイ輝石の割合が80-90%程度が一応の目安とされているようです。このような高純度のヒスイは、見た目としても透明度の高い上質なヒスイとなるでしょう。もっとも、この割合を下回る場合であっても、鑑賞に耐えうる美しさを保つ石もあると思います。いずれにしろ、私のような素人にとっては、見た目の質感で判断するほかない以上、あまり厳密に考える必要はないのかもしれません。

 ヒスイ輝石の本来の色は白色です。そこに微量の元素が混じることによって、上述のような、様々な色になるとのことです。緑はクロム(Cr)やオンファス輝石由来の鉄(Fe)、紫はチタン(Ti)、青はオンファス輝石由来の鉄とチタン、黒は炭素(C)が発色原因とのことです。

 ヒスイ拾いにおいて、白い石を探すのが定石とされているのは、ヒスイ輝石の本来の色が白だからということでしょう。

 なお、ヒスイ拾いをしていると、灰色のヒスイを拾うことがあります。しかし、ヒスイ輝石の色に「灰色」の記述はありません。これは、おそらく、ヒスイ輝石以外の鉱物或いは不純物が混じる割合が多いため、灰色がかって見えるのではないかと考えています。その意味では、灰色ヒスイというのは存在しないといっても良いかもしれません。

 ヒスイ輝石は、透明から半透明の石ですが、実際には、透明と言える程、高純度のヒスイが拾えることは、ほぼ無さそうです。そのため、ヒスイ拾いの場合には、半透明具合がヒスイを判別する目安となります。

 ヒスイ輝石は、他の白っぽい鉱物よりも重く、堅い鉱物です。

 ヒスイの比重(質量/体積)は、3.33とされています。実際には、他の鉱物や不純物が混じっていますので、私の場合には、白っぽい石で、比重が3.00を超えるかどうかを一つの目安と考えています。なお、比重は、①水を入れた容器の中に、石を糸で吊るして入れ、②押し出された水の質量(=体積)を測り、③その数値を、その石の実際の質量で割ることで得られます。

 傷のつきにくさ(硬さ)の目安となるモース硬度では、正長石(モース硬度6)と石英(モース硬度7)の中間に位置しています。一般的なナイフのモース硬度が5〜6なので、ナイフで傷がつくかどうかで試す方もいるようです。