或るヒスイ拾い人のブログ

ヒスイ拾い雑感。採集した糸魚川ヒスイの紹介。

ヒスイ拾い考 その四

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1-2 ヒスイの拾える場所について

 ヒスイは、富山県朝日町の宮崎海岸から新潟県糸魚川市大和川海岸にかけて拾えるとされています。それでは、どの海岸でヒスイ拾いを楽しむのが良いのでしょうか。拾い易い海岸というのはあるでしょうか。どの海岸でヒスイ拾いを楽しむべきかについての判断要素を以下にまとめます。

⑴ どんなヒスイを拾いたいか

 ヒスイの供給源は、姫川と青海川とされています。通常、山から川に流れた岩石は、川から海へと流れ、水流に揉まれるに従い、割れて細かく、磨かれて丸くなり、最後には砂粒になります。したがって、姫川や青海川に近い海岸であればあるほど、大きなサイズのヒスイと出会う確率が高くなり、遠ければ遠いほど、小さなサイズのヒスイと出会う確率が高くなります。他方、これらの川に近い海岸ほど、より岩石らしい、ゴツゴツとした荒々しいヒスイとなり、遠い海岸ほど、いわゆる「海石」と呼ばれる、自然の手によって磨かれた美しいヒスイとなります。糸魚川翡翠の価値は、ミャンマー産の翡翠とは異なり、この「海石」としての美しさにあるとも言われていますので、悩ましいところですね。

⑵アクセス、設備

 観光のついでなど、気軽にヒスイ拾いを楽しみたい場合には、アクセスの良さや、トイレや食事施設等のある海岸が良いでしょう。「ヒスイ海岸」と呼ばれる、宮崎海岸や押上海岸は、駅が近く、周辺に施設もありますので、車がない方にはお薦めです。須沢海岸や親不知ピアパーク、市振海岸には駐車場やトイレがあるため、車がある方の場合には選択肢に入ってきそうです。

⑶海岸の状態

 海岸が砂浜になっているなど、その日の状況次第では、別の海岸に変えた方が良いこともあります(他の海岸も砂浜かも知れませんので、海岸を変えたからといってヒスイを拾える保証はありませんが…)。

⑷ヒスイ拾いの穴場?

 そもそも、ヒスイは他の石に比べて絶対量が少ないので、「穴場」と呼べる海岸はないと思っています。逆にいえば、どの海岸であっても、タイミングさえ良ければヒスイを拾うことができます。どこの海岸を選ぶかよりも、一つの海岸の中で、どのポイントがヒスイを拾う確率が高そうかを考えた方が効率が良いですし、ヒスイ拾いをより深く楽しめるかと思います。そのためには、何度も同じ海岸を歩いて回ることが重要です。その内、潮の満ち引きや流れといった、その海岸の特徴、ひいては自然の奥深さ、ダイナミズムが肌感覚で分かるようになります。

 

2-2 ヒスイ拾いのルールについて

 フォッサマグナミュージアムが、持続的なヒスイ拾いの観点から、「翡翠の3ない運動」を提唱されていることは、以前述べたとおりですが、この点につき、若干の補足をしたいと思います。

 同ミュージアムでは、石の鑑定サービスが行われておりますが、特に、ヒスイを保護するために、以下のリンクのとおり、2018年4月1日から、手のひらサイズ(長さ15cm以上)を超える石の鑑定を行わないと変更された経緯があります。

石の鑑定サービスの変更について(2018年4月1日から) | 新潟県糸魚川の観光案内

 岩石は自然に砕けて個数が変わりますので、「翡翠の3ない運動」の内、個数で制限をかけるのではなく、「大きさ」で制限をかけたということでしょう。フォッサマグナミュージアム糸魚川市が設置管理する施設になりますので、今後、これが市の公式な見解となる可能性も十分にあるのではないかと考えています。

 いずれにせよ、このような経緯を踏まえますと、手のひらサイズを超えるヒスイを拾うことは控えた方が良さそうですが、私を含め、いざ、手のひらサイズを超えるような質の良いヒスイを目の前にしてこれを拾わない自信は正直ありません。人間の良心にのみ委ねるのは限界がありますし、将来にわたってヒスイ拾いが出来なくなってしまうのは何とも寂しい限りですので、個人的には、より詳細なルール作りはあっても良いのではないかと思っています。

 

4-2 ヒスイについて

 ヒスイの定義について、補足したいと思います。鉱物界で著名な松原聰先生著の「翡翠がわかる本(第2版) 小滝物産店発行」によりますと、岩石学上、「翡翠輝石の量が50%を超える岩石」を「翡翠輝石岩」と呼び、「ヒスイ輝石とオンファス輝石、それぞれあるいはその両者をあわせて90%以上含まれる岩石」を「翡翠」と定義されています(同著4頁)。(ちなみに、本書はヒスイの鉱物学的な知見が詳しく記載されていますので、より詳しく知りたい方はご購入をお薦めします。)

 勿論、肉眼でヒスイの含有量を判別することは困難ですが、ある程度ヒスイ拾いの経験を積んだ今では、何となく質の良し悪しが分かるようになります。例えば、手持ちのヒスイを私の感覚で判別してみますと…

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こちらのヒスイは、翡翠輝石岩(50%以上)とはいえそうだけど、「翡翠」とはいえないレベル。

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こちらのヒスイは、良い感じだけれども、「翡翠」とまではいえないかな〜くらいのレベル。

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こちらのヒスイは、「翡翠」といって良いんじゃない?くらいのレベル。

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こちらのヒスイは、「翡翠」と断言できるレベル。

以上は、あくまでも私の感覚ですが、大きく外れてはいないんじゃないかとも思っております。